小野寺 理佳 教授(社会福祉学科)
名寄市立大学教員紹介のコーナーでご紹介するのは、保健福祉学部社会福祉学科の小野寺理佳教授です。小野寺教授は、2006年に北海道大学大学院教育学研究科博士課程を修了され、博士(教育学)を取得されています。同年に名寄市立大学に着任され、社会学を中心に、学生教育と研究活動に取り組まれています。
研究活動では、『家族』における世代間の関係性を主な研究テーマとしています。小野寺教授の研究活動は、日本だけではなく、ブラジルやスウェーデンなども研究フィールドとして調査・分析し、様々な視点から現代における『家族』というもののあり方を考える研究となっており、それらの研究成果は多数の論文や著書となっております。小野寺教授は、震災以降、『家族』の結びつきの重要性が再認識された日本において、家族・親族関係が今後どのように構築されていくのかに関心を寄せ研究に取り組んでいる、家族社会学の専門家です。
1.ご自身の専門分野を教えてください。
私が勉強しているのは社会学です。社会学は幅広い学問ですが、その中の家族社会学という分野に最も関心をもっています。家族をめぐる日常的な現象を、その家族を規定している社会の仕組みや価値観などと関わらせながら分析し、「家族とは何か」を考えています。
2.大学での担当教科と学生教育に対する取り組みについて聞かせてください。
社会学系の科目、「社会学」「ジェンダー論」「家族社会学」「地域社会論」を中心に担当しています。これらの科目を通じて伝えたいことは3つ。1つめは、善悪・正否・好悪の序列をつけるのではなく、異なった解釈が並列的に存在することに気づくこと、2つめは、自分の立ち位置を自覚すること、3つめは、個人的な体験や主観的発言を自己点検しながら批判的に捉え直すことです。こうしたスタンスを身につけることは、将来専門職として、多様な背景をもつ多様な人々に出会い、多様な場面に立ち会う上で非常に重要だと考えています。
3.現在研究されている内容はどのようなことですか??
ひとは家族において様々な関係を構築しながら生きていますが、私が特に関心をもっているのは世代間関係です。近代家族の理念においては夫婦と子どもという核家族が基本単位をなしており、多世代の連なりという視点や多世代の関係性への関心はそれほど強調されずにきました。しかしながら、少子化・長寿化が進行することは、家族の成員数が減少すると同時に多世代の関係性が長期間継続されることを意味します。
例えば、三世代の関係は孫が生まれてから祖父母の死亡までおよそ30年間継続されます。祖父母世代はこの長い年月を、子どもにとっての「老親」、孫にとっての「祖父母」という立場で生きることとなります。同じ期間、その子世代は、祖父母にとっての「成人子」、自身の子どもにとっての「親」の立場での営為を求められ、孫は、親にとっての「子ども」、祖父母にとっての数少ない貴重な存在としての「孫」の立場を経験することになります。現代社会におけるこうした世代間関係のありようを、世代間の援助のやり取りや交流を軸として解明していくことを目指しています。
4.名寄市立大学の学生は小野寺先生にどのように写りますか。
素直でまじめ、ポテンシャルは高いと思いますが、少し引っ込み思案に感じる瞬間もあります。掲げる目標という点ではもっと野心的になってもいいと思います。そのためにも、力の「出し惜しみ」をしないで取り組む習慣を身につけてほしいと思います。最小の努力で最大の効果を得ることは効率という点では大事ですけれども、常に力の「出し惜しみ」をしていると結局は力が伸びていく契機を失ってしまうからです。
5.名寄という町の印象と高校生の皆さんへのメッセージをお願いします。
道北のこのこぢんまりとした盆地にいると、故郷や都会への恋しさを感じてしまうかもしれません。けれども、ここは、自分のペースを守りながら落ち着いて勉学に集中することのできる得難い環境でもあります。この環境をどう生かすかは皆さん次第です。
勉学は最終的には孤独な営みです。大学4年間で頭と心を鍛えて、卒業するときには「知的にタフな人間」として巣立っていってほしいと願っています。好奇心を大切に育ててください。