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平成30年度 名寄市立大学入学式 学長告辞を公開しました。

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2018年 入学式告辞

 本日ここ名寄市立大学に入学された新入生の皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して心からお祝いと歓迎の意を表します。皆さんを新たな仲間としてお迎えすることは、私たち教職員にとっても大変喜ばしいことです。ご列席の父母・保護者の皆様にも、心よりおお慶び申し上げます。また、年度初めのお忙しい中ご臨席を賜りましたご来賓の皆さまにも心より感謝申し上げます。

 本日入学された皆さんは197名です。一般入試、推薦入試、社会人選抜、3年次編入など多様な入学試験を経て入学した学生がいるということは大変好ましいことです。日本の大学入学者の平均年齢は18.1歳です。多くの皆さんは不思議に思わないかもしれませんが、海外では異なります。例えば、アメリカの大学の入学者の平均年齢は23歳、イギリス・ドイツは22歳、スエーデンは24歳であります。一度社会に出てから再び大学で学び直す学生が多いからです。多様な年齢、多彩な経歴の学生が混じり合って、互いに影響を与えあうことが欧米の一流大学の活性化に寄与していると言われています。いまは少しずつ変化の兆しは見えますが、大学新卒一括採用という日本式雇用システムが大学の多様性を阻んでいるともいえます。グローバルな人材育成を目指すなら、多様な学生を受け入れるシステムへ、大学だけではなく社会全体を変えることが必要と考えます。

 さて、新入生の皆さんは、いま大学に入学し、念願が叶ったという喜びと、大学での新しい生活への期待に胸を膨らませていることと思います。名寄市立大学は、昨年、鉄筋コンクリート3階建て、延べ床面積4,455平米で、最大14万冊を蔵書可能な新図書館を開館いたしました。特徴は、1階にIT機器や学習スペースなどを備え、グループ学習や討論など、学生が主体的に学びを行うスペースである「ラーニング・コモンズ」を配置していることです。また、この4月には、学生生活を快適にする180席のレストランやコンビニエンスストアなどを備えた新棟も完成しました。この恵まれた教育環境を思う存分に活用して、大きく成長してください。

 いま日本は先進国の先頭を切って人口減少、少子高齢化という大きな課題を抱えています。日本が直面する課題の解決策を研究し、課題に直面する人々に対し、総合的に支援できる知識・技術をこれからの4年間で修得するのが皆さんに課せられた課題です。しかし、知識だけでは働くことはできません。管理栄養士、看護師、保健師、社会福祉士、精神保健福祉士などの国家試験に合格することが必要です。皆さんは、高い授業料を払って4年間勉強するのは、大学卒業という資格を得るためだけではなく、社会に出て役に立つ知識・技術・資格を取得するためであり、私たち教員はそれを全力で支援したいと考えています。先日発表になった今年の国家試験で、本学は管理栄養士、看護師、保健師、精神保健福祉士で100%合格を達成しました。これは学生の皆さんの頑張りと、それを支える教員の努力の成果であります。何事もそうですが、達成するまでより、それを維持する方が数倍困難です。学生、教職員の皆さんのさらなる努力を期待します。

 いま、「AI vs 教科書を読めない子供たち」という本が話題になっています。新井紀子さんという、「ロボットは東大に入れるか」という2011年から始まった人工知能のプロジェクトチームのリーダーが書かれた本です。人工知能が人間の仕事を奪うのではないかという懸念が盛んに言われていることは皆さんもご存知だと思います。私も一昨年の入学式で新入生に皆さんにそのようなことをお話ししました。事実、いくつかの仕事は徐々にコンピューターにとってかわられています。しかしこの本では、「高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断力があればAIに勝てる」と言っています。例として、「先日、岡山と広島に行ってきた」と「先日、岡田と広島に行ってきた」の意味の違いを理解できないのがこのプロジェクトで作った人工知能「東ロボ君」であり、今日のAIということです。皆さんは、岡山は地名で岡田は人名だとすぐに理解できますが、人工知能には常識がないので、岡山と岡田の違いが理解できないのです。ディープラーニングと言われますが、AIの弱点は1万個教えてようやく1を学ぶこと、応用が利かないこと、決められたフレームワークの中でしか計算ができないことです。その反対の、一を聞いて十を知る能力や、応用力、柔軟性、フレームワークにとらわれない発想力を備えれば、AI恐れるに足らずということになり、それこそがこれから私たちに求められる能力なのです。

 しかし、新井さんらの調査では、簡単な日本語の読解力がない子が、中学生の3人に一人、高校生の10人に3人いることが分かりました。しかも、調査した高校は進学率100%の進学校でした。また、全国2万5千人を対象に実施した読解力調査では、高校生の半数以上が教科書の記述の意味が理解できていないことが判明しました。

 どうすれば基礎読解力が着くのか、大変興味がありますが、生活習慣、学習習慣、読書習慣などいろいろな項目を挙げたアンケート調査では相関性のあるものは残念ながら見つかりませんでした。読書習慣などは、相関があると思っていましたが、予想は裏切られました。

 彼女の「日本の教育が育てているのは、今もってAIによって代替される能力です」という言葉は、これからの日本の教育を考える意味では大変重要な指摘であると思います。江戸時代の「読み書きそろばん」教育が、明治以降の日本の近代化に大いに貢献したことは世界的に認められた事実であります。本学では入学者選抜段階で、文章の読解力と記述力・思考力を試す小論文を課しています。また、入学後1年目に「読み書き能力とコミュニケーション力を育む」授業を必修科目として配置していますので、卒業時には一定の読解力を取得していると考えていますが、いろいろな機会を利用して、AIに打ち勝つ読解力、教養を身に付けてください。先ほど、読解力と読書は相関がなかったと述べましたが、幅広い知識・教養を身に付けるため、月に1冊ぐらいは授業に関係のない本を読んでください。2017年の名寄市立大学生活実態調査」では「コミックを除く読書時間が週ゼロ時間」という学生が約6割でした。2年後の調査でこの数字が改善していることを願っています。

 大学時代の4年間はあっという間に過ぎてしまいます。皆さんが4年間、健康で悔いのない大学生活を送ることを祈念して、告辞とします。

平成30年4月4日 名寄市立大学学長 佐古和廣

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