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平成28年度卒業証書・学位記授与式名寄市立大学学長告辞を公開しました。

本日ここに学士の学位を授与された151名の卒業生の皆さん、おめでとうございます。晴れてこの日を迎えられた皆さんに、名寄市立大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。入学後、勉学に励み、研鑽を積まれてきた皆さんの栄誉をここに称えます。また、この日に至るまでの長い年月、皆さんの勉学を支えてこられた家族の皆様のご労苦に対し、敬意と感謝の意を表します。

卒業生の皆さんが本学で過ごされた4年間はどのような生活だったのでしょうか。期待に胸を膨らませて入学してきた日のこと、アルバイトから戻り眠い目をこすりながらレポート作成をしたことや、大学祭の楽しい思い出など、いま思い出されているかもしれません。そうした皆さんが、入学前に抱いていた夢や希望は実現できたでしょうか。できた人、できなかった人、それぞれいるでしょう。平成27年の日本人の平均寿命は、男性80.79歳、女性87.05歳です。皆さんにはまだ60年以上の時間が残っています。この4年間で出来なかったことを、これからの60年間かけてできないはずはありません。

昨年アメリカでベストセラーになり日本に紹介された、ペンシルベニア大学心理学教授、アンジェラ・ダックワース著の「GRIT:やり抜く力」という本があります。「グリット」は英和辞典では「困難にあってもくじけない勇気、気概」という意味ですが、ここでは「やり抜く力」と訳されています。それは「情熱」と「粘り強さ」の二つの要素からなるということです。「情熱」とは、自分の最も重要な目標に対して、興味を持ち続け、ひたむきに取り組むこと。「粘り強さ」とは、困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けることです。この本では、人びとがそれぞれの分野で成功し、偉業を達成するには、「才能」よりも「やり抜く力」が重要であることを、いろいろな研究や調査から科学的に解明しました。また、その「やり抜く力」を支えるのは、いろいろな誘惑を退ける「自制心」であります。「グリット」は近年、アメリカの教育界では特に重要視され、ビジネスやスポーツ界をはじめ各界で大きな注目を集めています。本日皆さんは卒業を迎えられたわけですが、卒業は終わりを意味するものではありません。学びに終わりはありません。職業人として、また社会人としての責任と義務を果たすためには、生涯にわたって学び続けることが必要です。

しかし、人生において目標を達成することは重要ですが、「グリット」の著者、アンジェラ・ダックワースはこうも言っています。人生で大事なことは「やり抜く力」だけではない。「偉大さ」と「善良さ」は異なるもので、どちらが大切かと言えば、私は「善良さ」の方が大切だと思っていると。この善良さとは、感謝の念を持つこと、社会的知性、怒りなどの感情のコントロールなどであります。私は、本学で4年間学んだ皆さんが、それぞれ目標をもって、その目標達成のため「やり抜く力」を発揮し、人生で成功を収めることを期待すると同時に、善良な市民になることを願っています。

さて、これから皆さんは社会に船出するわけですが、皆さんを迎える海は決して平穏なものではありません。いま私たちが直面している世界は、グローバル化による経済成長の負の側面である格差拡大から、その反動による自国主義、反ブローバル化の流れにあります。安定の時代から先行きの読めない変動の時代に移ろうとしています。多様性や異質な文化を受け入れない偏狭な社会へと変わる兆しが見られます。本学の教育目標の一つに「人類が抱える諸問題と異文化にも関心を持ち、広く世界の中で自己の存在を位置づけ行動する意欲を育む」という一文がありますが、私たちが目指してきた社会とは異なる価値観の台頭を感じます。世界のこのような潮流の中でも、自己を見失わず、他者と連携し、理想の社会の創造に挑戦してください。

最後に、卒業生の皆さんに一つの言葉を贈りたいと思います。それは、女篇に口と書き下に心と書く「恕」という言葉です。論語の一節に「子貢問いて曰く、一言(いちごん)にして以て終身之を行うべきもの有りや、と。子曰く、それ恕か。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ」

だいたいの意味はお分かりかと思いますが、孔子の弟子の子貢が質問しました。「生涯行うべきものを一文字で表せましょうか」と。先生はお答えになられた。「それは恕だな。自分が他人から受けたくないことは、他人にもしないことだ」と。二千数百年前に書かれたものが色あせることなく今にも通ずることは驚きですが、時代がどのように変わろうと、人の営みというものは変わることなく、人の心もまた同じということかと思います。

「恕」とは「ゆるす」ことであり、「他人への思いやり、自分のことのように、他人のことをおしはかる気持ち」のことです。皆さんはこれから弱い立場の人をケアする仕事につきます。従って仕事上は当然「恕」の心で臨んでいただきたいと思いますが、仕事以外の日常生活においても、親しい家族・友人あるいは同僚・先輩・後輩に対してもこの心を忘れないでください。

卒業生の皆さんには、名寄市立大学での経験を活かして不断に学び続け、希望に満ちた明るい未来を切り拓くことを祈念し、告辞といたします。

平成29年3月23日

名寄市立大学学長

佐古 和廣

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