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平成27年度 入学式学長告辞

学長

 平成27年度、名寄市立大学保健福祉学部、並びに短期大学部の入学式を挙行するに当たり、まず新入生のみなさんに心からお祝いを申し上げます。また、ご多用なところ、ご臨席いただきました来賓の方々、並びに新入生のご家族・保護者の方々に厚くお礼申し上げます。

 東日本大震災と原発事故から4年余り、なお故郷に帰還できない人々の心情を思うと胸が痛みます。また、沖縄の普天間から辺野古への基地移設をめぐる沖縄の人々の気持ちは、敗戦直前の沖縄戦における、ひめゆり学徒隊の生存者の発言とも重なるとき、あまりにも痛切です。本学のミッションともかかわる、わが国の社会保障などのありように関わって言えば、子どもの貧困、介護報酬の引き下げ、解消されない看護師、介護士、保育士の不足などが社会問題となっています。わたしたち一人ひとりが、ここで頭を働かせなければならないのは、これらの諸課題がすべて、例えば財源問題を通じて、直接間接にリンクしていることです。そしてそれは、日本の未来に関わった選択の課題でもあり、したがってまた、国民一人ひとりの政治意識や社会意識・規範の問題でもある、ということです。

 その中で、これからみなさんが、社会に必要不可欠な存在として、ケアサービスのプロとして関連する諸課題に応えていく、一人ひとりが「やりがい」をもって生きていくための条件、その基礎を提供しようとしているのが、栄養学科、看護学科、社会福祉学科で構成されている保健福祉学部と、児童学科で構成されている短期大学部からなる名寄市立大学であります。その点において、みなさんが本学を選択されたということは、まずは正しかったと確信しております。なぜなら、本学はいま、総意を持って「ケアの未来をひらく名寄市立大学」を創っていこうとしているからです。先に述べたことからすれば、みなさん方が学ぼうとする学問分野、あるいは将来目指そうと専門職領域は、当然、日本の未来のありようと関わっていることは想像できることでしょう。みなさん方は、そんな大きな課題にも取り組むことになる、その第一歩をこれから歩み始めようとしていると言えます。

 もちろん、みなさんが本学を選択したことが本当に正しかったかどうかは、これからの4年間あるいは2年間で、それぞれが、それぞれ必要な基礎的な知識や技術などを身につけ、たとえば管理栄養士、看護師・保健師、社会福祉士、保育士・幼稚園教諭、教師などとして、具体的な仕事についた後になってはじめてわかることです。その意味で真価が問われるのは、みなさんが就職してからということになります。だがその前に、やることはいっぱいあります。それが「充実した大学生活を送る」といったことです。

 その場合、一生懸命勉学に励むのは当然のことです。しかし、それ以外に、その中身について、あるいはその姿勢について、これから3点ほど、本日の入学式に当たり、みなさんにお話ししておきたいと思います。

 1点目は、お互いのあいさつの重要性についてです。こんなことを言うと、小学生の入学式のようだと思われるかもしれません。しかし、あらゆるコミュニケーションの始まりは、何らかのあいさつです。気持ちのいいあいさつは、相手をリラックスさせ、互いの緊張を解いていきます。「ケアの未来をひらく名寄市立大学」という場合のケア、そのケアの概念には、何よりもまず「気遣い」「思いやり」という意味が込められています。そうすると、本学の伝統とも言うべき互いのあいさつ、この単純な行為もまた、実に大きな意味を持っていることに気づかされます。互いに「にこっ」とした瞬間に、互いに溶け合う感覚はだれもが経験していることでしょう。みなさん方とともに、われわれ教職員もまた、そのことに自覚的でありたいと思います。

 2点目は、受動的知性の獲得といったことです。ここで「受動的」とは単に受け身といったことではなく、「与えられる教育課程における学び」といったような意味です。それぞれの専門の知識や技術の獲得には、それに応じた学び方があります。それぞれの学部や学科あるいは学年に応じたカリキュラムがあります。そこで提供される内容は、いわゆる大学の「教育の質の保障」として問われているところです。そこでは、その質の保障を担保すべく、本学の教員群によって各種の授業がていねいに厳しく展開されます。ついてきて欲しいと思います。そして、多くの入学生が、やがて4年後あるいは2年後に、それぞれ必要とされる国家試験などに合格し、それぞれの道を進んでいって欲しいと思います。

 もちろん、国家試験の合格そのものは最終目標ではなく、それはあくまで一通過点にすぎません。しかし、知識と技術に責任を持った専門職としてのデビューには欠かせないことであります。それはずっと生涯持ち続けることのできる資格となります。そのことに、われわれ教職員もまた自覚的でありたいと思います。みなさん方は安くない授業料を払い、多くの学生が奨学金という名の「教育ローン」を背負って卒業していくことになります。したがって「元はちゃんと取って当たり前」と考えてください。それがみなさん方の未来を保障する一部に必ずなります。

 3点目は、しかし、ここは予備校でもなければ、専門学校でもなく、大学です。タイトな中にも、自由な時間をそれなりに享受することができます。しかし自由だからこそ、自分自身の姿勢や工夫が試されます。そして自由には責任が伴います。その点で、学問に対する自由で能動的な時間も経験してほしいと思います。もちろんそうは言っても、これがなかなか容易ではないことも事実です。だがだれでも、在学中のどこかの時期に、何かをきっかけに、「勉強したい」「勉強はおもしろい」という瞬間が来ます。それを契機に、だれもが自覚的に学ぶことも追求して欲しいのです。それは大学で学ぶことの醍醐味の一つです。

 言いかえれば、先に述べました「受動的知性の獲得」に対して、この3点目は「能動的知性の獲得」といった意味になります。ここで知性とは、ある辞書によれば、「物事を考え、理解し、判断する能力。感覚によって得られた素材を整理統一して、新しい認識を形成する精神の働き」とあります。だから、学ぶ醍醐味とは、おそらく、そういった能力や精神を自ら働かせ、自分なりに何らかの答えを出すことの喜びとも言えます。そのプロセスが苦しいほど、何らかの答えがでなくても、やがてその経験そのものがみなさん方の血肉となっていくでしょう。

 あえて言えば、このような醍醐味をみなさん方が少しでも経験できなければ、本学の教育に欠陥があるとも言えます。わたしたち教員群は、そのことを意識しながら、みなさん方が自ら「勉強したい」と思えるような教育を展開させたいと考えています。それゆえ本学では、人間理解と知的関心を刺激するような多様な教育を提供するとともに、わたしたち自身のもう一つ使命である研究、とくに専門職の実践経験から生まれてくる諸課題に取り組むことも重視しなければ、と考えています。

 そこにおける教員自身が経験する、いわば「しんどさの中のおもしろさ」、あるいは「エキサイティングな感覚」をみなさん方にも伝えたいからです。そのことがやがて、みなさん方を将来、それぞれの職場で経験する実践課題に、自ら主体的に取り組むような専門職たらしめることに、つなげることになるだろうと考えているからです。それぞれの専門領域の先人たちが、いわゆる「臨床知」と専門性を関わらせながら学問体系を築きあげようとして格闘してきていることが、その重要性を示唆しています。みなさん方も、そんな姿勢を、本学の先生方から学んでほしいと思います。

 こう考えていくと、これからやることはいっぱいあります。あっという間に4年間あるいは2年間は過ぎていきます。しかし、その中でのわたしたちの組織的な教育とみなさん方の自覚的な積み重ねの応答が、やがてみなさん方一人ひとりに、それぞれなくてはならない専門力を備えさせ、社会における不可欠な役割を果たす存在たらしめていきます。そして、このみなさん方との応答する関係がわたしたち教職員をも鍛えて行きます。まさしくこの双方向の鍛え上げこそ、大学教育そのものの理想かもしれません。それは、ケアリングのプロセスが専門職とクライアントあるいは患者などとの応答的関係でなければならないことと、ほとんど同じと言っていいでしょう。

ともに頑張りましょう。
明日の社会を担うみなさまに大いに期待しています。

平成27年4月6日
名寄市立大学・名寄市立大学短期大学部
学長 青木 紀

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