トップ > トピックス > 平成27年度 > 平成26年度入学式学長告辞を公開しました。

平成26年度入学式学長告辞を公開しました。

学長

 平成26年度、名寄市立大学保健福祉学部、並びに短期大学部の入学式を挙行するに当たり、まず新入生のみなさんに心からお祝いを申し上げます。また、ご多用なところ、ご臨席いただきました来賓の方々、並びに新入生のご家族・保護者の方々に厚くお礼申し上げます。

 東日本大震災と原発事故から3年余り、なお胸が痛みます。しかし、原発への対応は曖昧なままであり、憲法の力づくの解釈が行使されようとし、隣国との関係も好転せず、不安定な世界の政治情勢の中で、日本の行く先も見えていません。TPP参加によって影響が心配される北海道は、2035年には、その人口は現在よりも100万人近く、全国ではおよそ1600万人の減少が予測されています。明らかにいま、われわれは新しい理念に基づく、新しい社会づくりに直面しています。われわれはその課題にどのように応えて行くべきでしょうか。一人ひとりの立ち向かう姿勢と責任の取り方が求められています。

 その中で、これからみなさんが、社会に必要不可欠な存在として、ケアサービスのプロとして関連する諸課題に応えていく、一人ひとりが「やりがい」をもって生きていくための条件、その基礎を提供しようとしているのが、栄養学科、看護学科、社会福祉学科で構成されている保健福祉学部と、児童学科で構成されている短期大学部からなる名寄市立大学であります。その点において、みなさんが本学を選択されたということは、まずは正しかったと確信しております。なぜなら、本学はいま、総意を持って「ケアの未来をひらく名寄市立大学」を創っていこうとしているからです。

 もちろん、それが本当に正しかったかどうかは、これからの4年間あるいは2年間で、それぞれが、それぞれ必要な基礎的な知識や技術などを身につけ、たとえば管理栄養士、看護師・保健師、社会福祉士、保育士・幼稚園教諭、教師などとして、具体的な仕事についた後になってはじめてわかることです。その意味で真価が問われるのは、みなさんが就職してからということになります。だがその前に、やることはいっぱいあります。それが「充実した大学生活を送る」といったことです。

 その場合、一生懸命勉学に励むのは当然のことです。しかし、それ以外に、その中身について、あるいはその姿勢について、これから3点ほど、本日の入学式に当たり、みなさんにお話ししておきたいと思います。

 1点目は、互いのあいさつの重要性についてです。こんなことを言うと、小学生の入学式のようだと思われるかもしれません。しかし、あらゆるコミュニケーションの始まりは、何らかのあいさつです。気持ちのいいあいさつは、相手をリラックスさせ、互いの緊張を解いていきます。「ケアの未来をひらく名寄市立大学」という場合のケア、そのケアの概念には、何よりもまず「気遣い」「思いやり」という意味が込められています。そうすると、本学の伝統とも言うべき互いのあいさつ、この単純な行為もまた、実に大きな意味を持っていることに気づかされます。互いに「にこっと」とした瞬間に、互いに溶け合う感覚はだれもが経験していることでしょう。みなさん方とともに、われわれ教職員もまた、そのことに自覚的でありたいと思います。

 2点目は、受動的知性の獲得といったことです。ここで「受動的」とは単に受け身といったことではなく、「与えられる教育課程における学び」といったような意味です。それぞれの専門の知識や技術の獲得には、それに応じた学び方があります。それぞれの学部や学科あるいは学年に応じたカリキュラムがあります。そこで提供される内容は、いわゆる大学の「教育の質の保障」として問われているところです。そこでは、その質の保障を担保すべく、本学の教員群によって各種の授業が厳しく展開されます。ついてきて欲しいと思います。そして結果的に、多くの入学生が、やがて4年後、2年後に、それぞれ必要とされる国家試験に合格し、それぞれの道を進んでいって欲しいと思います。

 もちろん、その合格は最終目標ではなく、あくまで一通過点にすぎません。しかし、知識と技術に責任を持った専門職としてのデビューには欠かせないことであります。それはずっと生涯持ち続けることのできる資格となります。そのことに、われわれ教職員もまた自覚的でありたいと思います。みなさん方は安くない授業料を払い、多くの学生が奨学金という名の「教育ローン」を背負って卒業していくことになります。したがって「元はちゃんと取って当たり前」と考えてください。それがみなさん方の未来を保障する一部に必ずなります。

 3点目は、しかし、ここは予備校でもなければ、専門学校でもなく、大学です。タイトな中にも、自由な時間をそれなりに享受することができます。しかし自由だからこそ、自分自身の姿勢や工夫が試されます。そして自由には責任が伴います。その点で、学問に対する自由で能動的な時間も経験してほしいと思います。もちろんそうは言っても、これがなかなか容易ではないことも事実です。だがだれでも、在学中のどこかの時期に、何かをきっかけに、「勉強したい」「勉強はおもしろい」という瞬間が来ます。それを契機に、だれもが自覚的に学ぶことも追求して欲しいのです。それが大学で学ぶことの醍醐味の一つです。

 言いかえれば、先に述べました「受動的知性の獲得」に対して、この3点目は「能動的知性の獲得」といった意味になります。ここで知性とは、ある辞書によれば、「物事を考え、理解し、判断する能力。感覚によって得られた素材を整理統一して、新しい認識を形成する精神の働き」とあります。だから、学ぶ醍醐味とは、おそらく、そういった能力や精神を自ら働かせ、自分なりに何らかの答えを出すことの喜びとも言えます。

 あえて言えば、このような醍醐味をみなさん方が少しでも経験できなければ、本学の教育に欠陥があるとも言えます。われわれ教員群は、そのことを意識しながら、みなさん方が自ら「勉強したい」と思えるような教育を展開させたいと考えています。それゆえ本学では、人間理解と知的関心を刺激するような多様な教育を提供するとともに、われわれ自身のもう一つ使命である研究、とくに専門職の実践経験から生まれてくる諸課題に取り組むことも重視しなければ、と考えています。

 そこにおける教員自身が経験する、いわば「しんどさの中のおもしろさ」、あるいは「エキサイティングな感覚」をみなさん方にも伝えたいからです。そのことがやがて、みなさん方を将来、それぞれの職場で経験する実践課題に、自ら主体的に取り組むような専門職たらしめることにつなげるかもしれないからです。そのことがやがて、職場という組織の中で個人的責任をしっかり取ることのできるみなさん方の自信の下敷きになるかもしれないからです。

 こう考えていくと、これからやることはいっぱいあります。あっという間に4年間あるいは2年間は過ぎていきます。しかし、その中でのわれわれの組織的な教育とみなさん方の自覚的な積み重ねの応答が、やがてみなさん方一人ひとりに、それぞれなくてはならない専門力を備えさせ、社会における不可欠な役割を果たす存在たらしめていきます。そしてこのみなさん方との応答する関係がわれわれ教職員をも鍛えて行きます。まさしく双方向の鍛え上げこそ、大学そのものの理想かもしれません。

ともに頑張りましょう。
明日の社会を担うみなさまに大いに期待しています。

   平成26年4月7日

  名寄市立大学・名寄市立大学短期大学部・学長 青木紀

お知らせ