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コラム@NCU「高校3年生・高校生(第3回:想定外の出会いが人生を豊かにする)」加藤 隆

 市立大学の加藤隆と申します。今回のテーマは「高校3年生」ということですが、皆さんに伝えるほどのこともなく思案していました。ですので、「高校3年生」の少し拡大バージョンで書いてみたいと思います。
 私が高校3年生のころ考えていたのは、とにかく卒業したら東京に行こう、東京のどこかの大学に入ろうということでした。理由は特になく、単純にそう考えていました。無意識に自分を変えたいと思っていたのかもしれません。そして、北海道の田舎町から花の東京に行っての数年間は、見るもの聞くもの何もかもに圧倒され、大学の割と近くにあったJR新宿駅の一日の乗降客は200万人でした(ちなみに今は300万人超)。東京での人、経験、街が醸し出すエネルギー…とにかく圧倒されました。そして、学生生活の中で突きつけられた宿題に今もって格闘しているような感じがしています。
 これだけカルチャーショックを受けたのは、生まれ育った環境とのギャップが大きかったと思います。日本海に面した港町に育った私は、早生まれということもあったのか勉強にはあまり興味がなく、小中学校の生活のほとんどは友人たちと野山や海川とともに過ごした感じです。海に潜って食べたウニの味、川魚をとった時の何とも言えない川の匂いと、とにかく大自然が先生でした。それでも、どうしても読書感想文の宿題があって読まざるを得なかったのか、小学校のころに読んだ『十五少年漂流記』をハラハラしながら読んだ記憶があります。
 大学1年生のとき、本との出会いで二つのことがありました。ひとつは、英語の授業で題材として紹介されたイギリスを代表するロマン派の詩人W.ワーズワースの「水仙」という英詩。そのくだりはこうです。    「I wander'd lonely as a cloud  That floats on high o'er vales and hills,  When all at once I saw a crowd,  A host of golden daffodils,  Beside the lake, beneath the trees  Fluttering and dancing in the breeze.…」眼前に出現した水仙の群れが遥か向こうまで続いている。金色の光り輝くその水仙は湖を縁(ふち)どりながら、そよ風に吹かれて揺れたり、踊ったりしている…。私はこの詩を前にした時に、瞬時に天然色の映像がバァーッと浮かび上がったのです。他の本でも情景が浮かぶことが多いので、私は物事の理解が視覚重視タイプかもしれないです。いずれにしても、このワーズワースとの出会いと感動は今でも心を揺らし続け、読書の持つ力をつくづくと実感した次第です。
 もう一つのことは、本を読むことを勧めてくれた大学のある先生の言葉です。この先生は夏休みになったら沢山読みなさいとは言わなかった。こう言ったのです。「それを読んで、夏休み中寝込んでしまうような、もう布団から起き上がれないような本を読みなさい。」と。確かに、我々の中には多読を評価するような風潮があります。しかし、大事なことは、その人間の深みにズシンと地震を起こさせ、何かを呼び覚ますような数冊の本との出会いなのだと思います。では、お前は寝込むような本に出会ったのかと聞かれそうです。自慢するようなことは何もありませんが、大学時代に幾度も読み返した精神科医V.フランクルの著書、明治大正期の教育思想家内村鑑三の著書に今でも触れているところをみると、少しは先生の教えを汲み取ったのかもしれないと思っています。
 いま、高校3年生の皆さんは進路に思案している時期かもしれないですね。「早く決めなさい!早く早く!」という風潮が強い昨今ですが、人生計画通りいくのは稀で、かえって想定外の出会いから人生の方向性が決まることもあるように思います。私自身は社会人になったのも人より遅かったですし、大学も四つも行くことになりましたが、「人生、何とかなるわい!」といつも思っています。「人生、何とかなるわい!」これが、高校大学を経験した私からの応援メッセージです。何かの参考になれば嬉しい限りです。

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