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コラム@NCU - 第1回 『急速な情報拡散社会に揺さぶられない』 石川 貴彦

名寄市立大学の石川です。大学では情報処理の授業を担当し、教育用Webアプリ(eラーニング:勉強をネット上で行う情報システム)の研究をしています。そこで今回は、私の専門である情報分野に触れながら、テーマの「最近思うこと、考えていること」について述べたいと思います。

「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」 信州大学の山沢清人学長が、平成27年度の入学式で述べた挨拶の一文です。スマホは日常生活に欠かせない道具であり、使うことをやめてまで大学生活を送ることに何の意味があるのかといった批判など、ネットニュース等で世間に強い印象を与えました。ただし、この挨拶には前後の文脈があって、前では「アニメやゲームなどいくらでも無為に潰せる機会が増えています」と述べ、後には「スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう」と述べています。つまり、スマホで無駄な時間を費やすなら、様々な物や人に触れて独創性を養おうではないか。その独創性こそが信大生の武器であり、多くの時間をスマホにあてて独創性を疎かにする行動は、武器を自ら放棄することになるというメッセージを入学生に伝えたかったのでしょう。しかしながら、「スマホやめますか…」という言葉だけがひとり歩きをして、この発言をめぐって賛否両論が起こったという状況でした。

この一文と並んでよく紹介される例として、東京大学教養学部の平成26年度卒業式の式辞で、石井洋二郎学部長が述べた一節があります。「大河内一男先生(元東大総長)が語ったとされる有名な言葉が思い出されます。曰く、『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』」これも後の文脈では、「この命題は初めから終わりまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね」と述べています。つまり、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」という言葉だけがひとり歩きしている状況なのです。式辞の続きでは、「皆さんが毎日触れている情報、特にネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思った方がいい」と述べ、さらに、「あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、『教養学部』という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる『教養』というものの本質なのだ」と述べています。

インターネットや携帯電話が普及して20年近く経ち、現在では多くの情報が急速に伝達する社会になりました。さらに、多くの人が目に留まりやすいように、メディアは短くまとめて伝えようとします。この短くまとめられた情報が、あたかも「情報の本質」であるかのように捉えられ、世間に急速に拡散してしまうことが問題だと私は思います。短くまとめられる過程で、本質を理解するために必要な周辺情報は削ぎ落とされるのです。山沢学長と石井学部長の言葉のように、情報機器だけに依存しすぎないこと、真偽を自分の目で確かめることが、急速な情報拡散社会に揺さぶられないために必要な行動だと思います。なお、今回取り上げたお2人の言葉は各大学のホームページに掲載されていますので、一度原文を読んで本質を知ることをお勧めします。

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