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松岡 是伸 専任講師(社会福祉学科)

 名寄市立大学教員紹介のコーナーでご紹介するのは、保健福祉学部・社会福祉学科の松岡是伸講師です。松岡講師は、2005年に日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科博士前期課程を修了され、修士(社会福祉学)を取得されています。2006年に名寄市立大学に着任され、ソーシャルワークや公的扶助分野の研究活動と学生教育にとり組まれています。
 研究活動では、公的扶助や援助関係におけるスティグマ(ネガティブな意味のレッテルのこと)に関する研究に従事され、数多くの論文発表を行っています。また、北海道教育委員会のスクールソーシャルワーク事業においてスーパーバイザーを務めた経歴を持ち、教育現場におけるソーシャルワーカーの役割と現状などについて講演も行っております。
 松岡先生は、劇的に変化する社会情勢と人間関係の中で、対人援助関係がどのようにあるべきかについて常に探求している新進気鋭の若手研究者です。

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1.ご自身の専門分野について教えてください。

 私の専門分野は貧困と排除です。私が大学生のとき、福祉のことをいろいろと調べていたら、社会福祉にとって「貧困問題が根本的な問題だ!」ということにたどり着きました。それ以来、貧困や排除、スティグマ(恥辱の烙印)、生活保護を専門に研究をしています。

2.大学で主に担当されている教科と、教育に対する取り組みについて教えてください。

 私が主に担当している教科は、「ソーシャルワーク論Ⅲ」「社会福祉調査論」「ソーシャルワーク演習Ⅰ」「ソーシャルワーク演習Ⅲ」「ソーシャルワーク現場実習指導Ⅰ」「ソーシャルワーク現場実習指導Ⅱ」「ソーシャルワーク現場実習Ⅰ」「ソーシャルワーク現場実習Ⅱ」です。その中で特に「ソーシャルワーク論Ⅲ」は、相談・援助の理論と実際をつなぐ架け橋となる教科です。福祉は「やさしさ」や「あたたかさ」というイメージを抱きやすいですが、社会福祉士の前に姿を見せるクライエント(利用者)は、生活に困難や課題を抱える人々です。社会福祉士はその生活困難に対して、ときには寄り添い、ときにその人自身の適応性や問題対処能力、社会的な応答性を高めていかなくてはなりません。そのため講義や演習では、援助の基本となるクライエントの「最善の利益」を確保する大切さを理解できるように心掛けて教授しています。 
 教育的な取り組みとしては、ポートフォリオを活用し、学生個々人の教育効果を高めるようにしています。ポートフォリオとは、学習物を綴っていくファイルのことです。活用しなければただのファイルですが、このファイルを使って学生一人ひとりの学びの蓄積と促進をはかり、振り返りを重点的に行っています。その狙いは、教員からの一方的な教授ではなく、ポートフォリオを活用した学生と教員による双方向の教育的向上と「対話」にあります。
 また講義では、学生に対して「論理的に考える」ということを要求しています。論理的に考えた結果が間違いであっても構いません。その間違いが、いつ、どこで、どのようにして生じたのかをしっかりと考えることが大切だからです。そして間違いを修正したうえで再度考える作業に入ってもらい、さらに、その過程をポートフォリオに綴っておくという作業を繰り返します。そうすることで将来、クライエントの深い生活問題や課題という「問い」をとことん考え、クライエントと共同して「答え」を追うことができる専門職者に成長していくと考えています。

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3.現在取り組まれている研究内容について教えてください。

 私の取り組んでいる研究は、スティグマ(恥の烙印)が福祉サービス利用者に及ぼす影響についてです。人は誰でも生活に困ることがあると思います。それが経済的な問題だとすると、食べることにも困ってしまいます。そのような生活の貧困に対して生活保護という制度を申請することができます。しかし、この生活保護という制度には、制度の申請をためらってしまうような「気恥ずかしさ」、「気後れ」があるということがわかっています。これを恥辱が人に烙印された状態、つまりスティグマということになります。このスティグマがあるとせっかくの制度を上手に活用することができません。このような現状から、私は、スティグマを解決しなければ、利用者の立場に立った制度利用もできないと思い、研究を始めました。
 スティグマはきわめて人々の感情に左右されます。日本にはスティグマは無いと言われる方もいます。しかしながら社会福祉学においてスティグマの問題は「古典的で新しい問題」と言われるように、今日に至ってもスティグマは福祉サービス利用者の面前に神話のように現れているのです。
 私は、このスティグマを貧困や依存という観点から、生活保護受給者などを対象に研究しています。そして、このスティグマが払拭される方法を調査研究しています。

4.名寄市立大学の学生の印象を教えてください。

 本学の学生は物静かで大人しく、礼儀正しいという印象を最初は持っていました。しかしながら、それは学生自身が内なる目標なり目的をしっかりと抱き、考えているためであるということがわかりました。彼ら彼女らは、社会にとってよりよい専門職者を目指し、日々の大学生活を送っているのだと感じました。その裏返しの物静かさだったり、大人しさだったのだと…。
 そして、それを証拠付けるかのように講義や演習などではとても熱心で、それは放課後などにも及びます。ときには講義外で鋭い質問を受け、議論となることもあります。
先ほどもお答えしましたが、ポートフォリオにおける学習は、学生の参加が必須です。学生が参加してくれなければこの学習方式自体がなりたちません。本学の学生は、夢や目標にむかって進むことのできる“真摯さ”を持っており、それによって私の行っている学習方式も成立しています。このような“真摯さ”が、名寄市立大学の学生の特徴だと感じています。

5.名寄という街の印象(良いところ、悪いところ含めて)と名寄のおすすめスポットがあったら教えてください。

 赴任当初、名寄市は「とても小規模で、こじんまりした街だなぁ」という印象でした。今では、研究室から見える夕暮れの紅葉を眺めながら、四季の豊かな街という印象も持っています。早朝の出勤前、たまに遠回りして、澄んだ空気と名寄川の畔を歩いていると川のせせらぎに、つい耳を預けてしまいます。大学での研究に疲れたとき、自分自身が‘ホッ’とできる場を見つけることができる街でもあります。自分が‘ホッ’とできる場があるということは案外、大切なことだと思います。
 名寄のお勧めスポットは、名寄峠から見下ろす夜景かもしれません。最近は行っていませんが、夜の峠から見下ろす名寄市の夜景は、暗闇の中の確かな輝きのようで綺麗でした。

6.これから大学を選ぶに際し名寄市立大学を希望する高校生の皆さんへメッセージをお願いします。

 将来の夢や希望を抱いている高校生、まだ先のことが分からないという高校生、過去につらい経験をしたという高校生など、それぞれの夢や思い、傷を背負いながら、いま大学受験にむけて励んでいると思います。大学のキャンパスはとことん物事を考えたり、たまには‘ボー’としながら空を見上げ物思いに耽ることができる場です。もちろんその中心には学問的な探求がありますが…。
 ある数学者が「学問には王道なし」と言いました。私も大学という場に王道はないと思います。大学は高校生の皆さんがいろいろな夢と過去を背負って、それぞれのスタイルで過ごし、自分を向上させていける場だと思います。そして大学での学びや経験を活かし将来にむけて羽ばたくことを期待しています。
雪解けの季節には高校生の皆さんにお会いできることをまだ雪降らぬ季節から楽しみに待っています。

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