トップ > 大学情報 > 教員コラム・インタビュー > コラム@NCU - 第1回目「人と動物の共生」 荻野 大助

コラム@NCU - 第1回目「人と動物の共生」 荻野 大助

みなさん,こんにちは.名寄市立大学の荻野大助と申します.大学では統計学や公衆衛生学などを担当しております.日も長くなり,北海道でもっとも良い季節がやってきました.皆様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか.

テーマ「共生」ということですが,今回ヒトと野生動物,ヒトと展示動物の共生に着目したいと思います.私は年に2回程度,動物園または水族館にプライベートで行くことがあります.動物たちに出会うと心が癒されます.しかし生き物ですから悲しい別れもあります.東京在住時,何度か井の頭自然文化園に行ったことがありますが,園で人気者であったゾウのはな子が2016年5月に69歳の大往生を遂げました.私はこれまで動物園といえば,動物たちを見に行く,会いに行くだけという固定観念がありました.先日学会に参加した際に旭川市旭山動物園園長の坂東元氏の講演を聴く機会がありましたので,動物園での取組みについて感じたことを書きたいと思います.

旭山動物園といえば,冬のペンギンの散歩が全国的に有名ですが,私も一度見に行ったことがあります.普段見ることのできない珍しい動物が見られるのも動物園ならでしょう.講演の中で,将来絶滅の危険性が高い(絶滅危惧種に指定されている)ボルネオオランウータンの話がとても印象に残りました.生息数の激減は,アブラヤシ畑(パーム油)などをつくるために,森林伐採や開発を進めたことによって,生息地であった森林が失われたことが主因です.畑に入ってくるゾウや孤児になったオランウータンなど,現地で目の当たりにして坂東園長は心を痛めたそうです.

旭山動物園の「おらんうーたん舎」は,飼育舎と運動場にある高さ17mの塔を有し,塔を渡るオランウータンの様子が観察できるのも目玉の一つです.通常の動物園では,転落した時のリスクを考え,あまり高くない塔にしているそうです.雄のオランウータンは体重約100キロ,雌は約50キロで半分くらいです.指一本で自身の身体を支えることができるので,握力は人間の比ではありません.雄の筋力がいかに強いかが想像することができると思います.このような種のペアリングをする際に,体格や力の違う雄雌を同時に入れることによるリスク(雄が必要以上の力を使って雌を死なせてしまうこと)が考えられます.今回の事例では,(別な園で育てられた)雄は平面的なところの環境で育てられており,一方の雌は旭山動物園で17mの高さの塔がある環境で育てられたため,高さに対する精神的なアドバンテージがありました.一緒に入れた初めの頃は,雄が支配力の強さを示そうとするものの,雌に対して自分(雄)の思うようになりませんでした.その後時間の経過とともに,雌に対して自分(雄)のことへ興味を惹かせるため,行動変容して気持ちも優しく変化していったそうです.この成功事例は,今後個体数を増やすモデルとして役に立つと考えられます.その他,ボルネオにおけるゾウや孤児になったオランウータンを保護する「ボルネオへの恩返し」プロジェクトについて,数年間の取組みが紹介されました.ヒトと動物たちとの関わりについて考えさせられる良い機会となりました.

北海道内の中でも,たとえばエゾシカの増加,ヒグマの人里への出没,希少動物の個体数減少など,共生について考えさせられる問題がたくさんあります.原因の候補を挙げていくと,温暖化などの気候変化,開発による環境の変化など,あれこれ思い浮かびますが,要因が交絡しているために根本原因が特定できない難しさがあります.動物たちはヒトと直接会話ができないので,個体数を減らす(増やす)ことによってヒトに気づいてもらうしかないのかもしれません.ここ名寄周辺には自然が多く残っているので,動植物を観察する時に共生という視点で考えてみてはいかがでしょうか.

お知らせ