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平成25年度入学式学長告辞を公開しました

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 平成25年度、名寄市立大学保健福祉学部、並びに短期大学部の入学式を挙行するに当たり、まず新入生のみなさんに心からお祝いを申し上げます。また、ご多用なところ、ご臨席いただきました来賓の方々、並びに新入生のご家族・保護者の方々に厚くお礼申し上げます。

 東日本大震災と原発事故から2年余り。関連するニュースに接し、わが身を置き換えて想像するとき、被災者たちはその苦悩にどのように折り合いをつけているのでしょうか。胸が痛みます。TPP参加がもたらす道内への影響や憲法改正などの動きも気になります。2040年には、道内の人口は現在よりも100万人近く減少することが予測されています。明らかにいま、われわれは新しい理念に基づく新しい社会づくりに直面しています。われわれはその課題にどのように応えて行くべきでしょうか。一人ひとりの立ち向かう姿勢と責任の取り方が求められています。

 その中で、これからみなさんが、社会に必要不可欠な存在として、ケアサービスのプロとして関連する諸課題に応えていく、一人ひとりが「やりがい」をもって生きていくための条件、その基礎を提供しようとしているのが、栄養学科、看護学科、社会福祉学科で構成されている保健福祉学部と児童学科で構成されている短期大学部からなる名寄市立大学であります。その点において、みなさんが本学を選択されたということは、まずは正しかったと確信しております。なぜなら、本学はいま、総意を持って「ケアの未来をひらく名寄市立大学」を創っていこうとしているからです。

 もちろん、それが本当に正しかったかどうかは、これからの4年間あるいは2年間で、それぞれが、それぞれ必要な基礎的な知識や技術などを身につけ、たとえば管理栄養士、看護師・保健師、社会福祉士、保育士・幼稚園教諭、教師などとして、具体的な仕事についた後になってはじめて、わかることです。その意味で真価が問われるのは、みなさんが就職してからということになります。だがその前に、やることはいっぱいあります。それが「充実した大学生活を送る」といったことです。

 その場合、一生懸命勉学に励むのは当然のことです。しかし、それ以外に、その中身について、あるいはその姿勢について、これから3点ほど、本日の入学式に当たり、みなさんにお話ししておきたいと思います。

 1点目は、互いのあいさつの重要性についてです。やがてみなさん方が関わる仕事の多くは、まず他者に共感することから始まります。この共感は、同情や思いやりという意味を持った英語のシンパシーから、感情移入という意味をも込めたエンパシーまでをも含みます。とくに後者はケアという仕事にとってだけでなく、人権の創造あるいは権利の平等といったことにも深くかかわった感情のありようとして、その役割には大きなものがあります。しかし、そのような共感力あるいはそれをもたらす人間性のようなものは、単純に勉強したから身につけられるものでは必ずしもありません。それは、それまでのその人の他者との交わりの経験、広く環境の持つ重みにかかわった、その人の個性や性格と関係していると思われるからです。

 しかし、そうだとしても、それを意識し、自分とは対極にあるような他者を理解しようとする努力が、言うまでもなく大事です。本学が生み出そうとする何らかのケアにかかわる専門職、そのケアの概念の根底には、まず「人間と人間の関係が基本にある」からです。そうすると、これから本学で教員から学ぶ専門はもちろん大事ですが、実は本学の伝統とも言うべき互いの「あいさつ」、この単純な行為が大きな意味を持っていることに気づかされます。互いに「にこっと」とした瞬間に互いに溶け合う感覚は経験していることでしょう。みなさん方とともに、われわれ教職員もまた、そのことに自覚的でありたいと思います。

 2点目は、受動的知性の獲得といったことです。ここで「受動的」とは単に受け身といったことではなく、「与えられる教育課程における学び」といったような意味です。それぞれの専門の知識や技術の獲得にはそれに応じた学び方があります。それぞれの学部や学科あるいは学年に応じたカリキュラムがあります。そこで提供される内容はいわゆる大学の「教育の質の保障」として問われているところです。そこでは、その質の保障を担保すべく、本学の教員群によって各種の授業が厳しく展開されます。きついかもしれませんが、ついてきて欲しいと思います。そして結果的に、多くの入学生が、やがて4年後、2年後にそれぞれ必要とされる国家試験に合格し、それぞれの道を進んでいって欲しいと思います。

 もちろん、その合格は最終目標ではなく、あくまで一通過点にすぎません。しかし、知識と技術に責任を持った専門職としてのデビューには欠かせないことであります。それはずっと生涯持ち続けることのできる資格となります。そのことに、われわれ教職員もまた自覚的でありたいと思います。こういう言い方はどうかとも思いますが、みなさん方は安くない授業料を払い、多くの学生が奨学金という名の「教育ローン」を背負って卒業していくことになります。したがって「元はちゃんと取って当たり前」と考えてください。それがみなさん方の未来を保障する一部に必ずなります。

 3点目は、しかし、ここは予備校でもなければ、専門学校でもなく、大学です。タイトな中にも、自由な時間をそれなりに享受することができます。しかし自由だからこそ、自分自身の姿勢や工夫が試されます。そして自由には責任が伴います。その点で、学問に対する自由で能動的な時間も経験してほしいと思います。もちろんそうは言っても、これがなかなか容易ではないことも事実です。だがだれでも、在学中のどこかの時期に、「勉強したい」「勉強はおもしろい」という瞬間が来ます。それをきっかけにだれもが自覚的に学ぶことも追求して欲しいのです。それが大学で学ぶことの醍醐味の一つです。

 言いかえれば、先に述べました「受動的知性の獲得」に対して、この3点目は「能動的知性の獲得」といった意味になります。ここで知性とは、ある辞書によれば、「物事を考え、理解し、判断する能力。感覚によって得られた素材を整理統一して、新しい認識を形成する精神の働き」とあります。だから、学ぶだいご味とは、おそらく、そういった能力や精神を自ら働かせ、自分なりに何らかの答えを出すことの喜びとも言えます。

 あえて言えば、このような醍醐味をみなさん方が少しでも経験できなければ、本学の教育に欠陥があるとも言えます。われわれ教員群は、そのことを意識しながら、みなさん方が自ら「勉強したい」と思えるような教育を展開させたいと考えています。それゆえ本学では、人間理解と知的関心を刺激するような多様な教育を提供するとともに、われわれ自身のもう一つ使命である研究も重視しなければと考えています。そこにおける教員自身が経験する、いわば「しんどさの中の創造することのおもしろさ」をみなさん方にも伝えたいからです。そのことが、やがてみなさん方を主体的な専門職たらしめることにつながるかもしれないからです。

 こう考えていくと、これからやることはいっぱいあります。あっという間に4年間あるいは2年間は過ぎていきます。しかし、その中でのわれわれの組織的な教育とみなさん方の自覚的な積み重ねの応答が、やがてみなさん方一人ひとりに、それぞれなくてはならない専門力を備えさせ、社会における不可欠な役割を果たす存在たらしめていきます。そしてこのみなさん方との応答する関係がわれわれ教職員をも鍛えて行きます。

 ともに「ケアの未来をひらく」ために頑張りましょう。
 大いに期待しています。


平成25年4月4日

名寄市立大学・名寄市立大学短期大学部 学長 青木紀

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